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第4話
日本人は『ホカホカ』のために生きている
2005.03.07

いきなり私事で恐縮だが、最近日本にいる時間が少なくなってきた。別に外資系の会社に勤めているわけではないし、外国語が得意なわけでもない。そんな時代だからなんだろうか。
海外にいると「日本食が恋しい」などという言葉を聞くのだが、私はあまりそう思わないようだ。そこの国なり、街なりのおいしいものを食べていれば幸せなのだ。海外で日本料理店に行くことはあまりない。
ところが日本に帰ってくるとどこからともなく沸いてくる欲求がある。その欲求を一言で表すと「ホカホカ」だ。
なんだろう、この適温感。冷めていない。しかも熱すぎない。
そして、なんだろう、この柔軟感。肌触りというか、口触り。程よくやわらかい。
この適度な感じが、すごくいい。いい感じの湯気が出ているようだ。
なぜ日本に帰ってくると、そうなるのか。どうも海外の料理にはない適度があるのだ。ホカホカなフランス料理、ホカホカのタイ料理、ホカホカパスタ・・・どうもピンと来ないのだ。ホカホカの中華料理、これは惜しい。ちょっと違う。ホカホカの肉まんを考えると面白い。日本のお店で食べるとホカホカを感じるのに、中国で食べるとなぜかアツアツと表現したくなる。
ホカホカご飯。これだけでうまそうだ。米を食べるのは別に日本人だけではない。しかし、日本のご飯ほどホカホカを感じられるものはない。
ホカホカにした「おかず」たち。あー、このホカホカのうまさをわかるのは自分だけだと言いたくなる。
先日、人間はジュージューのために生きていると書いたが、今回はこう書きたい。
日本人はホカホカのために生きている。
たとえば、英語でホカホカをどう表現すればいいのか。たぶん、hotとかwarmとかあたりだと思うのだが、そうではない。HOKAHOKAでもだめな気がする。ホカホカでしかない。
もちろん冷たかったり、熱かったり、日本料理にもいろいろな温度設定がある。しかし、ホカホカがひとつはないと何か物足りない。満腹でも「あれっ、今日はホカホカを食べていないぞ」と気づいてしまうと、もう一品ホカホカのものを求めてしまう。
しかも、このホカホカ、考えてみると短命だ。ホカホカしたものが、適度は厳しい。すぐに生温くなったり、硬くなったりしてしまう。
このはかなさがわかるか。私はこの一瞬を逃さないぞ。その一瞬のために生きるのだ。
ふと、周りを見まわす。
OLが無駄話ばかりしてホカホカの瞬間を逃した。
ゴマすりサラリーマンが上司の話に相槌を打っている間にホカホカが消えていった。
カップルが見詰め合っている間にホカホカが通り過ぎていった。
ホカホカに油断は禁物である。厳しい。
電子レンジでは温めることができても、ホカホカの再生は難しい。それがホカホカなのだ。そう、それは単なる熱の話ではなく、環境、プロセス、見え方・・・あらゆる条件が重なり合ってくる。
日本人の皆さん、ホカホカを大切に。



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