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第3話
「たまには、ちょっと寄り道してみよう。ワインでも持って」
2005.03.11
今回の映画は「サイドウェイ」。米国ゴールデングローブ作品賞、アカデミー賞の脚色賞(原作がある映画の脚本に贈られる)をはじめ、ニューヨークやロサンゼルスの映画批評家協会の作品賞など、数々の賞を受賞した玄人好みの「飲みたくなる映画」です。
離婚の痛手から立ち直れずにいる小説家志望の英語教師マイルスは、無二の親友で結婚を控えた落ち目の俳優ジャックをカリフォルニアのワイナリーをめぐる旅に誘います。中年男二人、ワインとゴルフ三昧で独身生活を謳歌するはずだったのですが・・・。
冒頭からワイン好きなら笑ってしまうシーンが次々と登場します。主人公のマイルスは大のワイン好きというかワインおたく。しかるべきワインを見つけると薀蓄がとまりません。一方親友のジャックはワイン好きというよりワインで女性を誘うことが目的。ブドウ品種が何であろうとおかまいなし。
そんな全く性格の違う二人が繰り広げる珍道中ですが、途中で魅力的な女性たちに出会います。一人はレストランで働くワインを愛するマヤ、もう一人はワイナリーに勤めるステファニー、二人ともそれぞれ人生経験をもつ大人の女性です。彼女たちとの交流を通し、生きる自信を失くしていたマイルスは自分自身を見つめなおすことになるのです。人生のピークを過ぎたダメ男にも幸せは訪れるのでしょうか・・・。
この映画を盛り上げる重要な脇役がカリフォルニアのワイン。舞台はお馴染み「ナパバレー」ではなく、サンタバーバラからクルマで45分ほど北に行ったサンタイネス、サンタマリアと呼ばれるエリアです。テーマパークのようになったナパバレーとは一味違ったのんびりとした田舎の雰囲気が残り、映画でも実在するワイナリーやレストランが使われています。ワインの嗜好は性格にも反映しています。マイルスのお気に入りは、ワインにロマンを求める人種が必ずはまるピノ・ノワール種。カリフォルニアのシャルドネを「樽香がわざとらしい」とこきおろします。 それなのにマヤがロマンティックな夜にワインの一生について熱っぽく語っても・・・。ワインを知っている人なら笑いをこらえきれないでしょう。
監督と脚本はアレクサンダー・ペイン。UCLAの大学院で映画製作を学んだ44歳。02年にジャック・ニコルソン主演の「アバウト・シュミット」で注目を集めた遅咲きの若手監督です。出演はワインを愛するダメ男マイルスにポール・ジアマッティ(37)、結婚を一週間後に控えた元人気俳優のジャックにトーマス・ヘイデン・チャーチ(43)、マイルスが思いを寄せるワイン好きの女性マヤにヴァージニア・マドセン(41)、ワイナリーで働くマヤの友人ステファニーにサンドラ・オー(33)と大人の渋い俳優を揃えています。サンドラ・オーは「トスカーナの休日」にも出ていた東洋系の女優さん。監督のペインの妻でもあります。
最後にこの映画の楽しみ方のコツをひとつ。あまり期待しすぎないこと。これはワインや人生と同じです。二人が泊まるのは豪奢なリゾートホテルにあらず質素なモーテル。でも枕元に赤ワインがあるだけでほんの少しだけ増す人生の味わい。ちょっと寄り道をする気分で見ていただくと、そのほろ苦さを楽しめることと思います。
ちなみに私が映画を見た六本木ヴァージンシネマではワインキャンペーン実施中。爽やかなナパの白ワインが楽しめます(\300)。
それでは映画に出てくるワインについて、eatpia.comの案内人、東條さんにもう少し解説してもらいましょう。
この作品に登場するワインは、会話の中に登場するもの、実際に飲んでいるものを合わせると、銘柄が分かるものだけで15種類以上。頻繁に登場するワイナリーでのテイスティングのシーンを含めるともっと種類が増えるのですが、そのほとんどのシーンでカウンター越しに登場人物を撮っている為に、ラベルが見えず、銘柄が分かりません。*テイスティングの際には、つぐ人ではなく飲む人側にラベルを向けて、ボトルを並べます。
カリフォルニアワインが中心ですが、ワインが好きな方なら誰でも知っているようなヨーロッパの名品も登場します。面白いのは、主人公マイルスをはじめ登場するワイン通(おたく?)達が最も大事にしているものや、ワインに目覚めるきっかけとなったのは、カリフォルニアワインではないこと。自分達の土壌・ワインに誇りを持ちつつも、やっぱり伝統的なヨーロッパものも好き という微妙な心理を、さりげなく表現しているように感じました。
登場するワインの中で個人的に印象に残っているものを1本挙げると、物語前半に登場する「バイロン 92 スパークリング」。2人のワインに対する考え方が端的に表れ、溢れる泡が旅のドタバタの予兆を象徴的に表現しています。
このように、各場面とそこに登場するワインやワインにまつわる会話が絶妙にリンクしているのも、この作品の特徴の1つ。また、ワイン好きな方はすぐに分かると思いますが、ワインマニアの間で古くから繰り広げられてきたピノ・ノワールとカベルネ・ソーヴィニヨン 論争を、マイルスとジャックの人物設定にうまくシンクロさせています。複雑で生産するのが難しいピノと、力強く華やかなカベルネ、自分はどっちだ?とふと考えてしまいそう。
ちなみに映画のパンフレットには、作品に登場する主だったワインとそのシーン、またぶどうの品種とその個性についても分かりやすくまとめられています。作品の余韻を楽しむ為、そしてワインの知識をちょっと整理する為にもお薦めです。
さて、見終わった後にはワインが飲みたくなること間違いなしのこの作品。上映館には、「この作品で登場したワインが飲めるお店一覧」(仮)というちらしがもうすぐ置かれる予定とのこと。これから見に行かれる方、是非探してみてください。
eatpia.comの加盟店でも、RICOS 麻布、CARDENAS Charcoal Grill、そしてCARDENAS Chinois の3店では、作品に登場するワインと同じ銘柄を楽しめる企画(*)を実施中です。また、他にRestaurant J、ROTI、Stellatoでも、カリフォルニアワインを楽しむことが出来ます。
* 作品に登場する全てのワインをお楽しみ頂けるわけではありません。銘柄、ヴィンテージなど詳細については、レストラン宛に直接お問い合わせください。
もちろん、レストランで飲むだけがカリフォルニアワインの楽しみかたではありません。今でこそ、希少価値故にフランスワインよりも高い値がついているものもありますが、もともとはアメリカ人のテーブルワイン。手頃なもの(\1,000前後)のものをまとめて購入。家でワイワイ飲んだり、またこれからの季節であれば作品内にもあったようにピクニックに持って行く(日本ではお花見?)というのも、とても楽しいハズです。
最後に、東京の「カリフォルニア料理」の今について。
一時期、ユニークな素材の組み合わせと奇抜とも言える盛り付け、そして何より物珍しさ故に、いわゆる「カリフォルニア・キュジーヌ」がブームとなりました。ただその後、イメージだけが独り歩きし、実体のない創作料理などと混同されてしまった感があるのは否めず、正直なところ、今の「カリフォルニア・キュジーヌ」に関する状況は、必ずしも盛り上がっているとは言えません。
この作品が注目されることで、ワインだけでなくカリフォルニアという農産物を育てるのに極めて理想的な土地と気候、そしてカリフォルニアの文化的背景でもある多くの異なるルーツをもつ人々の食文化の集大成がカリフォルニア・キュジーヌである ということへの理解が多少でも深まれば、一過性のブームではない「カリフォルニア料理」という新たなカテゴリーが、日本に定着するかもしれません。
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