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第4話
「モンドヴィーノ」
純粋にワインを楽しむ人が増えて欲しい?ワインの話
2005.11.9
2004年のカンヌ映画祭で上映され、世界のワイン関係者の間で論争を巻き起こしている映画が今回の「モンドヴィーノ」です。
ドキュメンタリー映画なので心をゆさぶるドラマはありません。ホームビデオで撮影されていて、緑あふれるブドウ畑も美しくは見えません。しかも、時間は2時間を越えます。そんなエンタテインメント性はほとんどない映画ですが、それでもワインを銘柄で選ぶような人なら、絶対におもしろいはずです。
ワインのドキュメンタリーだというのに、映像はブラジルのココ椰子の畑から始まりました。これはなにかの暗示のようです。収穫した椰子の実が散らばる海岸から、映像はヨーロッパの農村に移ります。夫の死後、愛情のすべてをぶどうの樹に注いできたと静かに語るフランスの女性(彼女はオーガニックよりストイックなビオディナミでワインを造る)。地味(テロワール)がワインの命なのだと熱っぽく語るイタリアの老人(彼はサルデーニャ島独自の品種で辛口の赤ワインを作り続けている)。土地と人とワイン、その結びつきの深さを語るワイン生産者たち。その深い皺のきざまれた顔が、突然、車の中で高笑いをするひげ面の男に変わります。
ミシェル・ロラン。世界各国を飛び回り、色が濃く、果実の凝縮味にあふれ、タンニンが柔らかくスムースなワイン造りを実践する醸造コンサルタントです。このようなワインこそが米国のカリスマワイン評論家、ロバート・パーカーが好むワインであり、カリフォルニアのワイン王、ロバート・モンダヴィが生産するワインです。ロランの指導を受けて生産されたワインはパーカーの高い評価を受け、市場を広げます。スクリーンにはナパヴァレーのモンダヴィ・ファミリーの豪邸と整然と刈り込まれてどこまでも並ぶ葡萄の樹がいっぱいに広がります。
グローバリゼーションとローカリゼーション。それを辛辣に語るのはニューヨークのワイン商です。「マンゴーだって、朝陽に当たるのと夕陽に当たるんじゃ味が違うんだ。それと同じさ」。彼の隣で倉庫係が頷きます。地味(テロワール)にこだわるブルゴーニュのワイン農家の親子、モンダヴィとのビジネスで兄弟の確執に揺れるトスカーナの貴族。そして、ココナッツがとれる大陸でも新たな挑戦者たちのワイン作りが始まります。果たして彼らはミシェル・ロランに頼るのか、それとも南米のテロワールにこだわるのでしょうか。
監督のノシターはニューヨークでソムリエの資格をとり、多くのレストランのためのワインリストを作成した経験をもっています。ノシターは気負いのない手法で淡々とインタビューを続けます。ミシェル・ロラン、ロバート・パーカーに雄弁に語らせながらも、見る人に訴えるものはなぜかその逆…。この映画を見たら、レストランで手に取るワインリストの向こう側に、きっと世界が見えるはずです。
次に、eatpia.comの案内人 東條さんが、ワインを売るサイドからの話をまとめてくれました。皆さんはどう思いますか。
売り手と一言で言っても、インポーター、小売、レストランと立場はそれぞれ。今回は「モンダヴィーノ」風に、レストランのワイン担当者、インポーター、ワイナリーのマーケティングコーディネーターに話を聞いてみました。*複数からの同じ主旨の意見は、1人の意見として集約している場合があります。
Q.「パーカーの採点についてどう思いますか?」
「パーカーの評価システム自体に問題があるとは思えないけど、その評価を鵜呑みにする人がいるのは問題だね。」 Maitre ‘D and Manager of Stellato Mr.Teich
「普通の人にとって分かりづらいものを分かりやすくしてくれたこと、言い換えれば一般的な市場価値を決めてくれることは、いいんじゃないですか。」 Restaurant J マネージャー 大形氏
「ワインの知名度の判断基準としては、いいと思います。ただ正直なところ、彼の評価の影響力がちょっと強すぎるのでは とは思いますね。」 CORTESIA オーナー 奥野氏
「初めて、分かりやすいガイドを作ったというのは、素晴らしいと思います。でも、ワインの楽しみ方は、点数では表せない。合わせる料理によっても、全く味が変わるんだということを体現する場こそ、レストランだと思っています。」 Chemins 経営 柴田氏
Q「ワインを選ぶ際の基準、またポリシーがあったら教えてください。」
「テイスティングをした際に、料理が浮かんでくるもの、最後は自分の直感を大事にしています。個人的には、セカンドラベルにこだわっています。」 奥野氏
「自分の中での味と価格のバランスに照らしたコストパフォーマンス。あと、ワインの作り手さんへの(自分の)思い入れも大事にします。店においているワインのうち、半分位の作り手さんには、実際にお会いしていますよ。ワインというより、彼らの人間性に惚れるんです。」 柴田氏
「紹介されるワインは、全て実際に味わってみて自分で良し悪しを決める。いつも努力しているのは、幅広い選択肢を提供すること、そしてバリューあるワインを提供すること。」 Mr.Teich
「レストランですから、あくまで料理が主役。値段とクオリティーのバランスは、自分の経験ですね。個人的には、小さくても頑張っている作り手を大事にしているつもり。ワインは、基本的には伝統を飲むもの。結局いいモノはいいし、売り手が頑張ることで、ワイナリーが育つと思っていますから。」 大形氏
Q「ワインを売る際に、パーカーの採点を利用することはありませんか?」
「散々テイスティングをした後で、パーカーの85点以上のものを頼む。 というインポーターも実在するよ。」 ワイナリーマーケティングコーディネーター Mr.Schneider
「採点が、90点以上の場合、売り込みのプッシュ材料にはします。でも、パーカーの100点をくれと言われると困るかも。だって、非常に入手困難なので。」 インポーター 堀江氏
「お客様との会話のツールとしては、いいと思います。正直、それをきっかけにどの程度のワインを薦めようか と決めることはあります。」奥野氏
「自分がワインを選ぶ時には、パーカーの評価は全く気にしない。でも、自分が選んだワインがパーカーにも高く評価されているなら、それを奨める際にはパーカーについても話をしてみる。」Mr.Teich
「自分から話をすることは、一切ありません。お客様から話が出たら、合わせる程度です。」柴田氏
Q「その他、ワインに関して何でも結構です。」
「ワインでも映画でも、ミリオンセラーよりロングセラー。宣伝しなくても、独り歩きするようなモノが最高だと思います。」柴田氏
「自分の意見と合う評価本を見つけると、楽しいですよ。自分には、イタリアのソムリエ協会編の一冊がしっくりきます。」奥野氏
「一番大事なのは、価格が幾らであっても美味しいワインを提供することだね。」Mr.Teich
「売り手は、ワイナリーからのメッセンジャーだと思って、この仕事をしています。」大形氏
多くの人に共通する見解から、個性溢れる熱い意見までありましたが、パーカーの採点やグローバリゼーションの特に価格への影響は実際にあるようです。でも、心ある売り手の人々は、それに流されることなくおいしいワインを適正価格で提供すべく、日々努力されている という印象を強く受け、ちょっとほっとしました。最後にレストランでワインを頼む際の使えるアドバイスを。
「2人で1本位が丁度良い というお客様の場合、白でも赤でもその日の気分で飲みたいものを決めて頂いていいんです。あとは、ソムリエにきいてください。ご注文頂いた料理ともちろんお財布具合にも合う1本を選んでくれるハズです。あと、特にこの料理には是非これをと、ボトルとは別にグラスワインを薦められた場合、少しだけでもトライしてみると、絶対新たな喜びがあります。」柴田氏
もう1つ最後に私自身がこの映画を見て感じたこと。それは、結局大切なのは、ワインを選ぶに際して「自分の価値感・判断基準」を持っているかどうか ではないかということです。絶対的に何を飲むべき ではなく、TPOに応じて「○○だから、今日はこれ!」という自然なスタンスが良いと思います。
これは、別にワインに限った話ではなく、レストラン、映画、ファッション・・・・何の選択においても同じこと。ただ間違いないのは、「自分の価値感・判断基準」を持つ為には、相応の経験を積まなければならない ということです。
そう、ワインであればまずは飲んでみること。この映画が、「色々なワインを飲んでみるきっかけ」になって、純粋にワインを楽しむ人が増えるのであれば、ノシター監督も本望なのでは?
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