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第6話
小さな「国際親善」

2005.04.28

こんにちは。料理人植木です。

つい先日、縁あって、第2次世界大戦の最中にアジアで日本軍の捕虜だったイギリス人の方々を僕のレストランにお招きし、ランチを楽しんで頂いた。今日は、これにまつわる話。

「縁あって」と書いたが、まずは、何故このようなことをするようになったのかについて。

さかのぼること、2年程前。ある団体が、心に傷を負った捕虜の方々を日本に招待し、食事や観光など様々な場を提供しているのだが、その際のディナーに知人を通じて僕も参加させて頂いた。そのディナーには、外務省関係や駐英大使の方も参加していたが、一番貴重だったのは、自分達の現在の生活ではとても考えられない悲惨な経験をした方々と同じテーブルで食事をし、色々と話が出来たこと。本やテレビなどからの間接的な情報ではなく直に話を聞くことで、歴史を直視すること、そしてそれを踏まえてこれから(=未来)を考えることの重要さを、わずかな時間だったが、他人事としてではなく考えさせられた。

その時に感じた「自分も、何かが出来ないか。」という思いを、関係者の方に伝えたのがきっかけで、彼らを僕の店に招待することになった。以来、今回で3回目だ。

彼らを招待するのは、毎回土曜日。当然、この日は貸し切りで一般の営業は休み。だが、僕も含めてスタッフ一同、正直なところ普段の営業より緊張する。なぜなら、参加される方々は、実際に捕虜だった方々とその子息。戦後50年以上経っているとは言え、日本に対して決して良い感情を持っているわけではない。過去には、最初にメニューを説明しても全く聞いて頂けず、オーダーを取るのさえ一苦労 ということもあった。

だが、食事が進むにつれて、徐々にだが場の雰囲気が変わっていくのが分かる。最初はかなりのしかめっつらだった人が、テーブル毎に挨拶をした際に耳をかたむけてくれたり、場合によっては少し笑顔を見せてくれたり。また、「日本人に対する誤解を、少しずつ変えたい。」とおっしゃってくれた人もいた。映画のワンシーンのように大げさな抱擁や涙があるわけではないが、食事を終えて帰る彼らの表情がいらっしゃった時とちょっと変わっているのを見ると、「このランチを実施して良かった。」といつも心から感じる。

中国での反日感情の高まりによる暴動や北朝鮮の問題など、戦争でおった傷跡が、今も尚色々な形で世の中を騒がせている。国と国との複雑な問題故に、事件1つ1つの裏にそれぞれの様々な思惑があり、報道されていることはその1面に過ぎないのだということは、理解している。でも、少なくとも戦争の傷跡に関しては、相手を非難するだけではなくお互いが膝を交えて話を出来る機会があれば、もう少し理解し合い、誤解が解けるのでは?とニュースを聞くたびに思う。

実は僕は、自分の中で密かに「日本人として、自分は何が出来るのか。」ということを、テーマとしている。もちろん、「日本人として」と振りかぶってみたところで、実際僕に出来ることは料理しかない。でも、幸いにして「おいしい料理を楽しみたい。」「食事、そしてその場・時間を楽しみたい。」という思いに国境はない。そして、おいしい(決して、高価である必要はない)料理は、無条件に人の気持ちを和ませる力を持っていると思う。

有難いことに、「Restaurant J」には、沢山の国籍の方々にお越し頂いている。彼らに楽しんで頂くことが、今の自分が「日本人として出来る」最大のことだ。・・・・・・なんてそこまで毎日シビアに考えているわけではないけど、先日イギリス人の元捕虜の方々と接して、改めて「料理人をやっていてよかった」と思ったのも事実。よ〜し、今夜も頑張るぞ。それでは、また。



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