第7話
「Aのテーブル」がオープンするまで
2005.06.28
こんにちは。料理人植木です。ちょっと、ご無沙汰しています。
突然ですが、さる5月20日、大阪、京町堀にナチュラルダイニング「Aのテーブル」というレストランがオープンした。今回は、このレストランのオープンにまつわる話。
実は、僕はプロデューサーという立場で、このレストランに携わっている。店のコンセプト作り、スタッフの教育、そしてメニュー開発が主な役割。店のコンセプトは、「オーストラリアの大地、自然をベースに、身体にやさしい料理を提供するレストラン」。このコラムを以前から読んで頂いている方は、ここでピンときたかもしれないが、第3回のコラムで触れたマギー・ビアーも関わっている。ちなみに、店名の「Aのテーブル」の「A」は、Australia のAとオーナーの頭文字をかけたもの。
どんな事業でもそうだと思うけど、何か新しいことを立ち上げるまでには、様々なプロセスがある。レストランをオープンする場合も、物件探し、店の設計、インテリア、キッチンシステム、スタッフ探し・・・・・細かく上げていくとキリがない。その中で僕にとって一番やりがいがあり楽しいのは、やっぱりメニュー作り!!以前にもコラムで書いたと思うが、子供が大好きなプラモデルや図画工作に熱中するような感じ。その時々の季節の食材、例えば夏に向かう今は、野菜ならグリーントマト、丸おくら、千両なす、魚ならアオリイカ、すずき、あわび・・・を思い浮かべながら、それらを組み合わせて、自分のフィルターを通して見える絵を描く。そして皿の上の実際の料理に仕立てる。こうして1つのメニューが出来上がった時は、格好良く言えば、料理人がクリエイターに変わり、そして料理人冥利につきる瞬間だ。
と、ここ迄は普段、自分の店のメニュー作りでも味わっていること。でも、料理人兼オーナーとして「お客様さえ喜んでくれれば、やりたいことをある意味ストレートに表現出来る」自分の店とは違い、新しい店、場所は大阪、そして何より僕の立場はプロデューサーである。店のコンセプトに合っているか、大阪のお客様の反応はどうか、自分がいない状態でも同じ味を出せるのか・・・・・と普段とは違う問題があった。
例えば、ラムを使った料理。僕の店「Restaurant J」では、ラムを一旦スモークしてからロースト。ソースはこがしバター椎茸ソース、そして付け合せにはゴートチーズとなすトマトのグラタンを添える。一方、「Aのテーブル」の場合、ラムは素直にロースト。ペッパーベリーの生クリームをソースの代わりに添えて、付け合せはブロッコリーニのガーリックソテー。読んだだけではご理解頂きにくいかもしれないが、最初に書いた店のコンセプトに合わせて、後者のほうがよりシンプルに、そして素材の旨味をストレートに引き出すことを考えた料理だ。
また、東京と大阪の違いで言えば、試食をした際に僕が感じたのは、「新しいもの好き」 な東京に対して、大阪は「ちょっと保守的」(=認めてくれる迄にやや時間がかかる)かな ということ。この感覚の違い、そして、自分が毎日厨房で一緒に働くのではなく、他人にレシピを渡して同じ味を再現してもらわなくてはいけない という観点を加えて、一旦描いた味や料理の微妙な手直しを行った。
これらの問題を、一旦、僕の中でクリアーにする → 僕が自分で作る → みんなで試食 → 実際のスタッフに作ってもらう → また試食 、同時進行で、素材の発注、仕込みの確認・・・・とようやくメニューが決まるのに合わせて、ワインリストを作製し、グラスや皿、メニューの形態などディテールを決める。そして、キッチン内の体制作り、料理・ドリンクをどうサービスするのかという教育、お店のオープンの告知、プレオープンによるプラクティス・・・・と経て、ようやくオープンにこぎつけた。
この話を最初に頂いてから実際にオープンする迄に約1年。東京の自分の店をおろそかには出来ないし、今回のような「プロデューサー」というのは自分にとって初めての経験で、正直結構キツかった。そして、今まで書いてきたことを実際に進めていった中では、いろいろとスッタモンダもあった。でも、新しいことを始めるのは素直に楽しい。そして、関わっている人達とそれぞれのアイディアを出し合いながら、何もなかった状態からオープンにこぎつけた今回の経験は、本当にエキサイティングだった。
「だった。」と過去形で書いたけど、「Aのテーブル」はスタートしたばかり。現在も、電話での確認は毎日、そして月に一度は大阪に行っている。僕がこんなことを書くのは、まだまだおこがましいけど、「お店って、結局は子供と一緒。1日、1日、その日のお客様を大切にしながら育てていけば、おのずと成長していく。」な〜んてことを、大阪から帰る新幹線で缶ビールを飲みながら感じている。
今回はちょっと雑多で長くなってしまったけど、まあ、いいや。
それでは、また。Have a nice day!!
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